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   本事業の実績 / 2011-2012 I 本事業の実績 / 2009-2010 I  過去の実績
 



 y1. 本事業の実施状況と今後について  
 y2. ハノーファー医科大学の実績
 y3. ヘルシンキ大学の実績
 y4. 大阪大学の実績

   

   
      1. 先端研究拠点事業の実施状況  
「国際戦略型」への以降に伴い国際会議を年に2回開催できるようになり、2011年度はまず8月にフィンランド・タンペレでのサマーセミナーを持ちました。(fig1)。

10月には名古屋で日本胸部外科学会と共催で国際ワークショップを開催しました。Haverich教授の基調講演に続いてロンドンの鈴木憲教授、女子医大の清水達也教授の特別講演と中身の濃い内容となりました。昼食を交えて3国コーディネーターによるトップ会談も行われ、事業の更なる発展を実感した1日でした(fig2)。


2012年度は6月の日本再生医療学会で国際シンポジウム・セミナーを開催しました。澤先生が会長を務められたパシフィコ横浜での会合は本事業のハイライトと言えるもので、数ヶ月前から教室の皆様、学会事務局と入念な準備を行い、海外からHaverich教授、Harjula教授に加えて、ハノーファーのBreymann先生とZweigerdt研究員、ヘルシンキのPatila先生を招請し、国内から早稲田大学の岩崎清隆先生と、国立循環器病センターの中山泰秀先生を招きました。 学会1日目の国際シンポジウムでは澤教授の挨拶、Haverich教授の基調講演に続き、Tissue Engineered (TE) 弁の研究成果を日独間で発表し、最後はHarjula教授の細胞移植の臨床研究の発表と続き(左)、2日目の国際セミナーは日独芬の若手研究者が集い、心筋組織再生研究の最新の研究成果を交換しました。これには京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の吉田善紀先生をコメンテーターとして招き、更には同時開催された国際幹細胞学会(ISSCR)に参加中のハノーファー医大LEBAO研究所のMartin所長、Gruh研究員も参加されました。 夜の会長招宴では招請者全員に、女子医大の岡野教授やドイツ・マックスプランク研究所のSchaper教授夫妻、俳優の辰巳琢郎さんらを交えた交流が行われました(右)。

8月にはハノーファーでサマーセミナーを行いました。澤教授はじめ阪大から10名、留学中の今西・斎藤両先生にヘルシンキ、ハノーファーの参加者を加えると総勢30名を超える規模になりました。初日はHaverich教授の歓迎の挨拶に始まり、心筋再生の臨床研究の発表、LEBAO研究所訪問の後、市内観光、そして郊外のマリエンブルグ城を訪れ、そこでの野外夕食会となりました。 2日目はHaverich教授の計らいでセミナー前に澤教授らが臨床カンファ・ICU回診に招待され、午前の特別セッションではTE弁に関するハノーファーの10年余にわたるTE弁の研究の歴史や臨床研究の成果、そして昨年から始まっている欧州での多施設臨床試験の概要が発表され、澤教授との間で熱心な議論が交わされました。午後は若手の研究発表で、鎌田先生、甲斐沼先生、今西先生が最新の研究成果を発表してくれました。セミナーの合間にとった集合写真は(左)当時Rebirthのホームページのトップに掲載され、Haverich教授の本事業に対する理解と期待も大きくなってきていることを感じる大変意義ある会合でした。

若手研究者の交流に関しては、ヘルシンキに白川先生が2011年9月から2012年2月まで、引き続いて今西先生が2012年10月まで滞在しました。ハノーファーには斎藤哲也先生が2011年8月からが3ヶ月滞在した後、2012年4月から斎藤俊輔先生が留学して実験に励んでくれています。また、阪大にはヘルシンキからポスドクのAntti Siltanen君が2012年4月から留学してiPS細胞を用いた共同研究を行い、更に充実した交流が実現されてきています。

 

【本事業の今後と国際臨床研究】

先端研究拠点事業も4年目を迎え、持続的な発展が続いています。留学に関しては教室からヘルシンキあるいはハノーファーへの留学者は、長期・短期を含めて14名に達し、シンポジウム・ワークショップ・セミナー等の会議に関してもウィーン、ジュネーブ、タンペレ、名古屋、横浜、ハノーファーの6回に至りました。2013年度は4月の神戸で開催されるアジア心臓血管外科学会時に関西で国際シンポジウム・セミナーを計画しており、8月にはサマーセミナーをヘルシンキで開催する予定にしています。交流ネットワークも広がり、参加者も増加の一途を辿っています。今後も若手諸君の積極的な参加を期待しています。 本事業は2013年度で終了ですので、発展しつつあるこの国際コンソーシウムを今後どのように維持・発展させていくか事業資金を含めて検討する時期に来ています。事業成果をまとめる時期でもあり、教室の研究業績・臨床業績としてまとめる必要も感じています。また、国際共同研究の過程で懸案となっている、心筋シートおよびTE弁の国際臨床研究をどのように実現していくかも大きな課題です。今後心筋・心臓弁の再生研究は、iPS細胞や新たな培養方法を用いた手法で国際的に益々発展していくことに疑いの余地はありませんが、国際臨床研究には基礎分野での共同研究に比べて様々なハードルがあり、これを今後どう克服していくかが楽しみです。

 

ハノーファー医科大学 小野 正道


fig1
fig2
fig2
 
 
 
 
 
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2. ハノーファー医科大学の実績  

LEBAO: The Leibniz Research Laboratories for Biotechnology and Artificial Organs

ハノーファー医科大学のThe Leibniz Research Laboratories for Biotechnology and Artificial Organs (LEBAO)は、ドイツ研究振興協会(German Research Foundation; Deutsche Forshungsgemeinschaft, DFG)のLeibniz賞により、1996年にAxel Haverich教授が設立しました。 LEBAOはドイツにおける再生医療の全国的研究機関であるthe Cluster of Excellence “REBIRTH”の中心的な研究施設です。Axel Haverich教授を臨床部門のリーダー、Ulrich Martin教授を基礎研究部門のリーダーとし、基礎部門と臨床部門が密接にかかわることで再生医療・組織工学・臓器移植の基礎研究からその臨床応用まで、幅広い研究が可能となっています。

LEBAOは現在、下記の3主要研究部門から成り立っています。
dot分子生物工学および幹細胞研究:Molecular biotechnology and stem cell research (リーダー:Ulrich Martin, PhD)
dot組織工学:Tissue engineering (リーダー:Andreas Hilfiker, PhD)
dot人工肺:Bioartificial lung (リーダー:Stefan Fischer, MD)
それぞれの研究部門は、循環器および呼吸器疾患に対する新たな治療法の開発を目的とし、ハノーファー医科大学およびの他研究機関、ハノーファー大学、REBIRTHに参加するドイツ国内の他研究機関、さらにthe Competence Center for Cardiovascular Implants (Medimplant)、the Corlife Company、the joint projects on medicine technology (CrossBIT)といった企業との産学連携を実現しております。
LEBAOは2008年よりハノーファー医科大学構内のHans Brost Center for Heart and Stem Cell Research内にあります。

研究部門
分子生物工学および幹細胞研究
:Molecular Biology and Stem Cell Research

幹細胞は、我々の身体を構成する様々な細胞がそれぞれの働きを持った細胞に分化する以前の幼若な細胞で、様々なタイプの細胞に分化する能力を持っており、理論的には無限に増やすことが可能です。胎児のみならず、成体(成長した個体)においても様々な臓器・組織の中に存在しており、臓器・組織の修復、再生に関わっていることが知られています。しかし成長した臓器内に存在する幹細胞は再生能・分化能ともに限られており、これが再生医療として応用する際の妨げとなっております。これに対し胎児性幹細胞:embryonic stem cell(ES細胞)は、高い再生能・分化能をもち究極の再生医療を実現させることが可能です。ES細胞から様々な臓器に特徴的な細胞に分化させる技術はすでに確立されており、一個体のクローンを作成することも理論的には可能です。しかしながら、ヒトのES細胞は将来一人の人間として成長し得る細胞であり、この細胞を再生医療の材料として利用することには大きな倫理的問題が存在するため、ES細胞の臨床応用は現在実現されていません。

一方、京都大学の山中伸弥教授の研究グループが開発した人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell:iPS細胞)はES細胞と非常によく似た性質・機能を備えており、多くのタイプの細胞に分化する能力を持っています。ES細胞と違いiPS細胞は胎児の細胞を用いるのではなく、大人の細胞(たとえば皮膚の細胞)に生体外(いわゆる「試験管内」)で特定の遺伝子導入をすることで作成されます。通常、一旦成長した細胞は、幼若な幹細胞に戻ることはありえないのですが、遺伝子操作によりそれをなしえたものがiPS細胞です。ES細胞における倫理的問題を克服することが可能であるのみならず、患者さん本人の細胞から作成することも可能なため、移植した細胞・臓器が患者さんの免疫反応により拒絶されるという免疫の問題も同時に克服が可能であると考えられています。 現在iPS細胞が臨床応用に至っていない最大の理由は、幼若な幹細胞はそのまま再生医療に用いることはできないのみならず、幼若なまま生体に移植した場合には奇形腫(teratoma、一種の癌のような病気)が発生する可能性が非常に高いことが挙げられます。このため、iPS細胞を臨床応用するためには、一旦幼若化した細胞を再び目的とする細胞に確実に分化させる高い技術が必要とされているのです。


LEBAOの分子工学および幹細胞研究部門では、幹細胞を心筋細胞および気道上皮細胞に分化させる研究、さらに再生医療における免疫学的な研究が中心に行われています。


iPS細胞は様々なタイプの細胞に分化するの力を持ちます。

 

ES細胞およびiPS細胞から分化させた心筋細胞の集合体に特殊なバイオリアクター(左図)で物理的な刺激を加えることで、自発的にかつ個々の細胞が同調して収縮する人工心筋:bioartificial cardiac tissueの作成に成功しました。 (Kensah G, et al. Tissue Eng C Methods 2011;17:463-473)

 

 


人工心筋:Bioartificial cardiac tissueの作成過程 (Kensah G, et al. Eur Heart J 2012;PMID:23103664)

作成された人工心筋 (Kensah G, et al. Eur Heart J 2012;PMID:23103664)

 

組織工学:Tissue Engineering

様々な組織工学技術を用いて、障害された臓器・組織を置換したり再生させたりするための医用材料の開発を行っています。心臓の弁・血管といった疾患の治療に欠かせない代替物を、人工物ではなく生体材料を用いて作成するために、生物由来の材料や目的とする組織に特異的な細胞を用いて研究がおこなわれています。組織工学の究極の目的は、生体由来もしくは人工基盤と患者さん本人の細胞を組み合わせ、しかも患者さんの体内で生態環境に適応し成長も可能な医用材料の開発です。自己細胞・組織を用いた治療材料は、
dot 拒絶反応のリスクがない
dot 免疫抑制剤を使用する必要がない
dot 他の病気がうつるリスクがない
dot 特に小児において、組織の成長が期待される
などの点において、大きなメリットがあると考えられています。

組織工学技術を用いて開発された人工心筋(左)、人工心臓弁(右)
 


心臓弁および血管
現在進行中のプロジェクトの大きな目標は、自己心臓弁(肺動脈弁、大動脈弁および僧帽弁)と大口径血管(大動脈と弁付き静脈)を組織工学技術を用いて作成することです。これらの弁や血管は、以下の条件を満たさなくてはなりません。
dot 自己組織から成る、すなわち免疫原性がないこと
dot 抗血栓性に優れていること
dot 患者さん(とくに小児)の身体の成長に合わせて、ともに成長すること
これらの組織を作成する土台には、異種の動物(ヒツジやブタ、ウシなど)の弁や血管を用います。異種の組織から結合組織を傷つけることなく細胞だけを取り除き、そこに患者さん本人の細胞を培養したものを生着させます。現在このようにして作成された心臓弁や血管を用いて、大動物での実験が進行中です。

人工気管
今のところ、腫瘍や事故、または先天性疾患により欠損してしまった気管を修復したり補ったりする医用材料は開発されておらず、臨床現場における問題点となっています。当部門では、患者さんの自己小腸の一部を用いた人工気管の開発を行っています。小腸組織の血流を温存したまま、外部を軟骨組織で固定し内側表面に自己の上皮細胞を生着させることで、患者さんの自己組織・細胞からなる人工気管を作成します。

血管付き心筋パッチ
心筋梗塞や心筋症で機能を喪失した心筋組織を再生医療で補う試みは世界中で様々な方法で行われています。障害心筋に幹細胞を注射器で注入する方法もその一つです。しかし、移植した細胞や組織にいかに酸素・栄養を供給するかが共通した課題になっております。そこで当部門では、組織工学技術を応用して血管構築を備えた人工心筋パッチを作成し、移植の際に血管吻合を行って血流を供給し続けることで、長期に移植した組織を生着させる研究を行っています。


人工肺:Bioartificial Lung

毎年世界中で900万人もの患者さんが肺疾患により命を落としており、肺疾患はヨーロッパにおける死因の第3位に数えられています。末期肺疾患においては、腎臓における透析のような有効な代替治療は存在せず、肺移植のみが有効な治療法とされています。そして臓器移植のためのドナー不足は、世界中での大きな問題になっております。そこで当部門では、埋め込み型の「バイオ・ハイブリッド人工肺」の開発研究を行っています。 当研究の第一段階は、現在ドイツで臨床使用されている補助人工肺、NovalungR iLA™ Membrane VentilatorRの改良です。この肺補助装置はガス交換膜の微細構造がヒトの肺胞―毛細管床(ヒトの肺で、血液が酸素を取り込み二酸化炭素を排出する部分)と類似しており、またこの部分での血流抵抗が少ないため、通常のヒトの血流で(人工のポンプなどを組み込まなくても)血液の酸素交換を行うことが出来ます。ハノーファー医科大学では、世界で初めてこのNovalungR iLA™を用いて末期肺疾患の患者さんを肺移植まで橋渡しすることに成功しました。これにより、この装置がある一定の期間、患者さんの肺機能を完全に代替することが可能であることが示されました。


NovalungR iLA™の欠点は、膜における血栓と新生内膜形成により、3〜4週間で機能低下が起こることです。当部門では、NovalungR iLA™の膜の表面に内皮細胞をコーティングすることで、装置の血液適合性を高める(装置が血液と接触したときにおこる、願わしくない反応が起こりにくくする)ことを目指しています。

 
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3. ヘルシンキ大学の実績  

心筋梗塞に対する他家筋芽細胞と
間葉系幹細胞混和シート移植療法の開発
:今西悠基子, Esko Kankuri, Ari Harjula

背景
これまで臨床研究において虚血性心疾患に対する自己由来筋芽細胞シート移植療法の有効性および安全性が示されてきた。しかしながら緊急時対応や移植用細胞の均質性保証等といった課題が残されており、これらを克服するために自己細胞に替わり他家細胞の検討が必要である。他家筋芽細胞移植の場合は免疫応答の制御が必要である。近年、間葉系幹細胞(MSC)は免疫応答を抑制する生理活性物質を分泌すること、その免疫抑制能はiNOSの発現により増強されることが報告されている。本研究では心筋梗塞に対する細胞移植においてアロ筋芽細胞移植にMSCを併用することにより免疫応答を緩和し、治療効果を示すと考え検討を行った。

方法および目的
MSCにおけるiNOS発現を増強させるため培養中のMSCに炎症性サイトカインを添加したところ、インターフェロンγ(IFNγ)およびリポ多糖(LPS)で刺激した場合に発現上昇を認めた。

図1.MSCにおけるiNOS発現のウェスタンブロット解析。

次に、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した他家筋芽細胞で細胞シートを作製し、皮下における他家筋芽細胞の生着を生体内イメージングシステムで評価した。他家筋芽細胞単独では10日後に他家筋芽細胞が検出されないのに対し、他家筋芽細胞にMSCを混和したシートでは10日後にも強いシグナルが検出された。12日後iNOS増強MSCを混和したシートの場合のみシグナルが検出された。

図2.ルシフェラーゼ遺伝子導入他家筋芽細胞シート皮下移植。

今後、ラット心筋梗塞モデルを用いて他家筋芽細胞・MSCの混和シートの免疫抑制効果、他家筋芽細胞の生着、および治療効果について検討が必要である。

図3.心筋梗塞モデルラットに対する細胞混和シート移植プロトコール

結論
他家筋芽細胞シートにiNOS発現を増強したMSCを混和することにより、他家筋芽細胞の生着期間の延長を認めた。心不全に対する他家筋芽細胞シート移植において、MSC併用移植は免疫抑制剤を使わないで移植細胞の生着期間を延長する方法として有用である可能性が示唆された。

 

 
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4. 大阪大学の実績 / 大阪大学心臓血管外科  

大阪大学心臓血管外科の主な研究テーマ  
大阪大学心臓血管外科領域の主な研究テーマは、これまで行われてきた極めて侵襲の高い外科的治療法をいかにして、侵襲の少ない、患者の体に優しい治療法を開発するかを基本的なコンセプトとして研究を進めている。

重症心不全に対する再生型治療の開発
現在、大阪大学では、拡張型心筋症、虚血性心筋症患者に対する筋芽細胞シート移植の臨床研究を行っている。人工心臓を装着した拡張型心筋症患者4例に筋芽細胞シートを移植し、3例において、心機能が向上し、2例が人工心臓より離脱した。また、人工心臓を装着していない虚血性心筋症、拡張型心筋症患者13例に自己筋芽細胞シートを移植した。これらの患者の一部において、左室容積の縮小化、血流の回復等のreverse remodeling効果を認めた。現在では企業による治験を開始している。また筋芽細胞シートをベースとした新規薬剤の開発も行っており、同薬剤の臨床応用を目指している。  筋芽細胞は、心臓への移植後、心筋細胞へは分化せず、Connexin43も発現しないため、レシピエント心筋とは協働して収縮しない。従って、その心機能回復効果は、シートから発現する肝細胞増殖因子等によるパラクライン効果であると考えられ、臨床例でも線維化の進んだ、残存心筋が少ない心不全に対しては、効果が薄いことが検証されており、このような心筋に対してはレシピエント心と電気的に結合し、直接心臓に収縮力を与えるような、心筋細胞と同様の電気的活動性を有する心筋細胞様の細胞を補充することが必要と考える。 この問題点を解決するためには、iPS細胞から心筋細胞に分化誘導し、細胞を大量に培養し、温度応答性培養皿を用いて細胞シートを作成し、不全心に移植するような再生型治療の臨床応用を目指すことであると思われる(図1)。現在、大動物心不全モデルを用いた非臨床試験は完了しており、iPS細胞由来心筋細胞シートの安全性の検討段階にはいっている。


図1

動脈瘤に対する再生型治療とステントを混合したハイブリット治療の開発
また、これまでの大動脈瘤治療は、動脈瘤を人工血管に置換する手術を主体とした治療であるが、より低侵襲に大動脈瘤内のステントを留置し、これを治癒させる、患者にとって極めて低侵襲な方法が臨床の場で行われている。さらに、大動脈ステントの効果を高めるために、大動脈ステントに細胞遊走を促すような薬剤をコンジュゲートし、大動脈ステントを自己大動脈と一体化させるような新規ステントの開発も行っている(図2)。


spc図2

 

    論文業績  2011 / 2012 / 2013
1.
In Vivo Differentiation of Induced Pluripotent Stem Cell-Derived Cardiomyocytes.
Yu T, Miyagawa S, Miki K, Saito A, Fukushima S, Higuchi T, Kawamura M, Kawamura T, Ito E, Kawaguchi N, Sawa Y, Matsuura N.
Circ J. 2013 Feb 8.
2.
Tissue- and Plasma-Specific MicroRNA Signatures for Atherosclerotic Abdominal Aortic Aneurysm.
Kin K, Miyagawa S, Fukushima S, Shirakawa Y, Torikai K, Shimamura K, Daimon T, Kawahara Y, Kuratani T, Sawa Y.
J Am Heart Assoc. 2012 Oct;1(5):e000745.
3.
Myocardial Layer-Specific Effect of Myoblast Cell-Sheet Implantation Evaluated by Tissue Strain Imaging.
Shudo Y, Miyagawa S, Nakatani S, Fukushima S, Sakaguchi T, Saito A, Asanuma T, Kawaguchi N, Matsuura N, Shimizu T, Okano T, Sawa Y.
Circ J. 2012 Dec 29.
4.
Bioengineered myocardium derived from induced pluripotent stem cells improves cardiac function and attenuates cardiac remodeling following chronic myocardial infarction in rats.
Miki K, Uenaka H, Saito A, Miyagawa S, Sakaguchi T, Higuchi T, Shimizu T, Okano T, Yamanaka S, Sawa Y.
Stem Cells Transl Med. 2012 May;1(5):430-7.
5.
Feasibility, safety, and therapeutic efficacy of human induced pluripotent stem cell-derived cardiomyocyte sheets in a porcine ischemic cardiomyopathy model.
Kawamura M, Miyagawa S, Miki K, Saito A, Fukushima S, Higuchi T, Kawamura T, Kuratani T, Daimon T, Shimizu T, Okano T, Sawa Y.
Circulation. 2012 Sep 11;126(11 Suppl 1):S29-37.
6.
Intracoronary artery transplantation of cardiomyoblast-like cells from human adipose tissue-derived multi-lineage progenitor cells improve left ventricular dysfunction and survival in a swine model of chronic myocardial infarction.
Okura H, Saga A, Soeda M, Miyagawa S, Sawa Y, Daimon T, Ichinose A, Matsuyama A.
Biochem Biophys Res Commun. 2012 Sep 7;425(4):859-65. doi: 10.1016/j.bbrc.2012.08.004. Epub 2012 Aug
7.
Transplantation of elastin-secreting myoblast sheets improves cardiac function in infarcted rat heart.
Uchinaka A, Kawaguchi N, Hamada Y, Miyagawa S, Saito A, Mori S, Sawa Y, Matsuura N.
Mol Cell Biochem. 2012 Sep;368(1-2):203-14. doi: 10.1007/s11010-012-1361-4. Epub 2012 Jun 21.
8.
Myoblast sheet can prevent the impairment of cardiac diastolic function and late remodeling after left ventricular restoration in ischemic cardiomyopathy.
Saito S, Miyagawa S, Sakaguchi T, Imanishi Y, Iseoka H, Nishi H, Yoshikawa Y, Fukushima S, Saito A, Shimizu T, Okano T, Sawa Y.
Transplantation. 2012 Jun 15;93(11):1108-15.
9.
Tissue engineered myoblast sheets improved cardiac function sufficiently to discontinue LVAS in a patient with DCM: report of a case.
Sawa Y, Miyagawa S, Sakaguchi T, Fujita T, Matsuyama A, Saito A, Shimizu T, Okano T.
Surg Today. 2012 Jan;42(2):181-4. doi: 10.1007/s00595-011-0106-4. Epub 2011 Dec 27.
10.
Establishing new porcine ischemic cardiomyopathy model by transcatheter ischemia-reperfusion of the entire left coronary artery system for preclinical experimental studies.
Shudo Y, Miyagawa S, Fukushima S, Saito A, Kawaguchi N, Matsuura N, Sawa Y.
Transplantation. 2011 Oct 15;92(7):e34-5.
11.
Induced adipocyte cell-sheet ameliorates cardiac dysfunction in a mouse myocardial infarction model: a novel drug delivery system for heart failure.
Imanishi Y, Miyagawa S, Maeda N, Fukushima S, Kitagawa-Sakakida S, Daimon T, Hirata A, Shimizu T, Okano T, Shimomura I, Sawa Y
Circulation. 2011 Sep 13;124(11 Suppl):S10-7.
12.
Novel regenerative therapy using cell-sheet covered with omentum flap delivers a huge number of cells in a porcine myocardial infarction model.
Shudo Y, Miyagawa S, Fukushima S, Saito A, Shimizu T, Okano T, Sawa Y.
J Thorac Cardiovasc Surg. 2011 Nov;142(5):1188-96. doi: 10.1016/j.jtcvs.2011.07.002. Epub 2011 Sep 14.
13.
Clinical impact of combined transplantation of autologous skeletal myoblasts and bone marrow mononuclear cells in patients with severely deteriorated ischemic cardiomyopathy.
Fujita T, Sakaguchi T, Miyagawa S, Saito A, Sekiya N, Izutani H, Sawa Y.
Surg Today. 2011 Aug;41(8):1029-36. doi: 10.1007/s00595-010-4526-3. Epub 2011
14.
Allogenic skeletal myoblast transplantation in acute myocardial infarction model rats.
Imanishi Y, Miyagawa S, Saito A, Kitagawa-Sakakida S, Sawa Y.
Transplantation. 2011 Feb 27;91(4):425-31.
15.
Tissue-engineered cardiac constructs for cardiac repair.
Miyagawa S, Roth M, Saito A, Sawa Y, Kostin S.
Ann Thorac Surg. 2011 Jan;91(1):320-9. doi: 10.1016/j.athoracsur.2010.09.080. Review.
   
 
 
 
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